10月の週末に開催された飛鳥ワインの「大人の遠足 飛鳥ワイナリーツアー」に参加してきました。飛鳥ワインのスタッフの方の説明をお聞きしながら、ブドウ畑を散策し、その後工場を見学します。最後に6種類のワインをテイスティングしながら、ランチをいただき、楽しむ企画です。
目次
飛鳥ワイン・ワイナリーのスタッフの方の説明(サマリー)
飛鳥ワインと大阪のワイン歴史について
江戸・明治時代は日よけ用としてブドウが植えられていた。地中海性気候にブドウが合うように、大阪は瀬戸内気候でブドウ栽培に適している。また、近隣には大きな市場(大阪)があり、交通の便もあるためブドウ栽培は発展した。
昭和初期の頃は、大阪は全国で最も大きな産地であったが、現在は最盛期の半分程度である。デラウェアに限れば3番目、ブドウ全体では7番目である。
飛鳥ワインのオーナーの仲村家はもともとブドウ専業農家であった。昭和9年に室戸台風が8、9月のブドウの収穫・出荷の最盛期に上陸し、大きな被害をもたらした。ブドウが収穫前に木から落ちてしまい、その落ちたブドウを無駄にせず、活用するため、ワイン造りを行ったのがいきさつである。
ワインを造るには醸造免許が必要となるが、台風による被害を受けた農家への行政面の救済処置の1つとして、醸造免許が取りやすかった背景がある。
飛鳥ワインは、上記昭和9年(1934)からで、85年間と長い歴史を持つ。
飛鳥ワインのブドウ畑の散策
飛鳥ワインの1つめの畑、デラウェア
ビニールシートをかけることで、出荷を早めることができ、概ね5〜6月に出荷する。通常だと7月頃。
飛鳥ワインの2つめの畑 甲州
9月2〜4週。欧州のような垣根栽培もしている。13年位前に植樹したが、花は咲くがなかなか実がならなかった。通常の収穫量が1トン程度あるところ、100kgと10分の1程度であった。そのため、樹を切るかどうかを迷っていることを畑でつぶやいていたら、ぶどうの樹に聞こえたのか、翌年から6倍の600kgを収穫することができた。現在も甲州は切らずに収穫している。
飛鳥ワインの3つめの畑 シャルドネ
従来から植えていたデラウェアを切り、ワイン用のシャルドネを植樹し、現在1000本程度を植えている。垣根栽培。ブドウの実に栄養が行くように、樹の成長を一定の高さで止めるようにしている。8月に完熟する。
枝については剪定をして、通常は1本の樹に10本の枝、1つの枝から2房なるようにしている。つまり1本の樹から20房ができることになる。もちろん樹のサイズや樹齢などによっても、枝・房の量をコントロールしている。
樹の樹齢は20年位から働き盛りになり、60年位までが安定した質と量をつける。100年でも実をつけるものもある。
本日テイスティングするスパークリングのシャルドネはこの畑から収穫したもの。
飛鳥ワインの4つめの畑 ヴィニフェラ試験栽培
5,6年前は雑草が生い茂っていたが、草刈りをして土地をならし、現在のような畑にした。多数のブドウ品種がある中で、この地域ではどんなブドウ品種が育てやすいか、美味しいワインのブドウ品種は何かを探る意味もあり、ピノ・ノワール、バルベーラ、テンプラニーリョなど約20種類を植えている。
樹が垣根栽培のT字になるまでは、ブドウができても収穫はしない。4年目位から収穫を始める。また、ワインの品質の良し悪しは熟成期間にもよるので、10年程度は継続しないとそのブドウ品種の適性はわからない。
ブドウの葉っぱには、白いボルドー液という農薬の一種を添付している。葉っぱを枯れさせず、もたせるためにやっている。
ワイン用のブドウには堆肥を少し加える程度で肥料を与えない。化学肥料を与えないことで、持続可能なブドウ栽培を目指している。
飛鳥ワインの5つめの畑 メルロー
通称イノシシ畑と呼んでいる。畑の真後ろが山であり、そこにイノシシが住みついている。イノシシはブドウの実を食べたり、穴をほったりする。他の樹と比較して細い木は、イノシシに食べられて植え替えているためである。イノシシ対策として、畑の周りは電気柵で囲っている。
この畑にはメルローを1000本程度植えている。8下旬から9月頭に収穫する。長野県など北に行くと1ケ月遅れ位で収穫する。
ブドウの苗木について
ブドウの樹は苗木から育てるが、ほとんどの木は飛鳥ワイナリーが育てた苗木を植樹している。
苗木は枝からつくる。冬に剪定した枝をさすだけで、根と芽が出てくる。
地温が暖かくないと根が出ない。芽がでても根がないと枯れてしまう。ちなみに、土から上に出ている長さと根の長さは同じ位。
ブドウネアブラムシという天敵がいて、欧州系のブドウはこの天敵に弱い。そこで、苗木を作るときに、アブラムシに耐性のあるブドウの樹に接木(ツギキ)をする。
隣の樹が近すぎると、隣の樹の根と干渉して大きくならないため、一定の間隔を空けている。
堆肥について
飛鳥ワインでは循環農法に取り組んでおり、剪定した枝、葉、ワインを造る過程の澱などを利用して植物性の堆肥を造る。10ヶ月ほどかけてかき混ぜつつ、発酵させて完成させる。
飛鳥ワインの工場の見学
ブドウの摘み取り
手摘みをしてコンテナに入れていく。ブドウの粒を間引きしながら行うので、時間をかけて行う。機械で摘むと、不良な粒も一気に摘み取ってしまうし、ブドウの樹を痛めてしまうため、手摘みで行っている。
除梗
写真は除梗する機械で、この工程でブドウのジクを取り、実だけにする。
搾汁
ブドウの実からブドウ果汁を搾り取る。搾汁してブドウ・ジュースを作る。一度に2500kg。
ユーロプレスの搾汁器は中で風船が膨らみ圧迫することで搾汁する。黄色の搾汁器は、機械の中で壁を近づけていき、ブドウの実に圧力を加えて搾汁する。
ちなみに、ワイン用のブドウは、アルコール発酵のために高い糖度が必要であるから非常に甘くて美味しい。
8月のワイナリー・ツアーの際には飲むことができる。
ステンレス発酵
昔は木ダルを使用していたが、現在はステンレスタンクを使用している。発酵には酵母が必要となる。そして、酵母には、酵母の餌となる糖が必要となる。
発酵では温度が重要となる。液体の温度は発酵過程で上昇する。温度が高いと香りが揮発して飛んでしまう。よって12〜14度の冷蔵庫の中で行う。
現在、冷蔵庫の中で甲州を発酵させている。発酵する際に炭酸ガスが発生するので、写真のように泡立ってる。
濾過
その後、濁りを濾過して、白ワインになる。
赤ワインはブドウのジクを取った後、種と果皮も全て入れて、まず「醸す」という工程を行う。特に種からよく出るタンニンには抗酸化作用があり、また渋味の元となる。
温度は25〜28度位で1週間で「醸す」工程は終わり、その後、果汁とそれ以外に分離し、貯蔵庫で保管する。
貯蔵庫
200リットル~5000リットルを超えるものなど様々なサイズのステンレス・タンクがある。白ワインはステンレス、木の樽は赤ワインに利用している。木樽の中のワインを順次入れ替えて、木樽からステンレス・タンクに移していく。
木樽は口が小さく、手で洗うことなどができないため、硫黄のガスを使って樽の中の菌を除去する。また、木であるため乾燥等で木と木の間に隙間ができてしまうので、常にワインを入れるようにしている。
発酵過程で炭酸ガスが発生し、空気より重いため、ステンレス・タンクの底に溜まる。大型のタンクを洗うため中に入るが、気をつけないと酸素がなく危険な時もある。
スパークリング・ワインは、シャンパーニュと同じ瓶内2次発酵をしている。二次発酵のため、糖を添加して発酵させる。千円前後のワインは炭酸ガスを充填しているものが多い。そのためすぐに泡がきれる。しかし、二次発酵は液体に溶け込んでいるので、繊細な泡が長く続く。
瓶内で2次発酵をするため瓶内の澱を取り去る必要がある。そのため瓶を逆さにしておき、瓶の口に澱を貯めておく。澱を貯めた瓶の口を不凍液に差し入れると、1,2分で瓶の先の澱の部分が凍る。
そうすると凍った個体部分が綺麗に抜ける。
コルクの打栓
スパークリングのコルクは、元々は円柱の形をしている。円柱型のコルクを瓶に差し込んでいる間にキノコのような形に変形する。
コルクは瓶口のサイズまで絞り込み、そして瓶口に打栓する。炭酸ガスでコルクが飛び出さないように針金で補強する。
この澱を取り、コルクを打栓する作業は全て手作業で行うため、5,6名が1日かけて500本程度しかできない。
瓶詰め
スパークリング以外はこの機械を使用する。まずシャワーで瓶の埃を取り、次に瓶にワインを詰める。液量を微調整して、コルクをスパークリングの場合と同様に絞って差し込む。これらの一連の作業をこの機械で行える。機械だと1時間で1500本できる。
最後は、人の目で検品し、ラベルを貼り、完成!
飛鳥ワイン・ワイナリーでのテイスティング
写真はテイスティング・ルーム内、ディスプレイとカウンター。
飛鳥ワインをテイスティングした感想とおすすめワイン3種
6種類と1種類おまけで合計7種類をテイスティングしました。私は飛鳥ワインは10年近く前に赤ワインを飲んでいますが、その時の印象とは一変しており、非常に美味しいワイン達でした。本当に日本のワインのクオリティは飛躍的に高くなっていると思います。
ですので、どのワインも美味しかったのですが、敢えて3本を選ぶという設定をして、おすすめを選んでみました。下記文中にある「★おすすめ」の記載があるワインが、おすすめ3種です。
飛鳥 スパークリング シャルドネ 2018 2850円
★おすすめ
柑橘系果実、ハーブの香りと味わい。日本の食卓に合うと思いますし、暑い夏に冷やして飲んでも美味しいスッキリ系のスパークリング。甘味は控えめで、酸味は強すぎず、上品な味わい。
完熟のシャルドネ 2340円
レモンやグレープフルーツなどの柑橘系果実の味わいと香り。イメージとしては、スッキリした寒い地域で取れるシャルドネ。上記スパークリングのシャルドネとよく似た香りや味わいがするが、スパークリングより、はっきりと感じることができる。
飛鳥 リースリング 2017 2620円
★おすすめ
香りは清涼感があり、爽やか。そして、柑橘系果実の香り。味わいは青りんご、柑橘系果実。少し甘味と酸味があり、ミネラリーで、全体としてはバランスが良く上品な仕上がり。これは美味しいリースリングです。
飛鳥 カベルネ・ソーヴィニョン 2013 3060円
フレッシュなブラックベリー、ブルーベリーなどの黒系果実、スパイスの香り。味わいはフレッシュでジューシーなブルーベリーなどの黒系果実の味わい。香りがかなり良い。
飛鳥 アルモノアール 3360円
★おすすめ
フレッシュなブラックベリー、ブルベリーなどの黒系果実、スパイスの香り。味わいは、フレッシュなブルーベリーなどの黒系果実、バランスが良く上品な酸味がある。
アルモノワール種はカベルネ・ソーヴィニョンとツバイゲルトレーベを日本で交配された新品種です。
上記飛鳥カベルネ・ソーヴィニヨンとかなり近い香りで非常に良い。また、味わいはカベソーよりもフルーティで少し身軽な印象。酸味が上品なので、全体のバランスが非常に良い。若飲みしても美味しくいただけるワイン。
クオリティはカベソーと同程度ですが、こちらの新品種はかなり面白いと思います。
にごり新酒 やや甘口 1320円
非常に飲み口が爽やかなフルーティなワイン。甘いワインをあまり飲まない私でも甘さがほとんど気にならない。酸味とのバランスが良い、上品な甘さを伴う美味しいワイン。
このワインに使用する果汁を添加しているため、このフレッシュ感があるようです。アルコール度数も7%程度と低めで飲み易いです。
マスカット・ベーリーA(「河内醸造ワイン」の元となるワイン)
フレッシュで赤いベリー系果実や花などの華やかな香りがする。少し甘味があり、チャーミングな味わい。ハマりそうな美味しさでした。
飛鳥ワインに限らず日本ワイン全般ですが、無濾過にごりワイン(赤・白)は結構お気に入りです。
飛鳥ワインで試飲したワイン ワイナリーのコメント
飛鳥 スパークリング シャルドネ2018 2850円
瓶内二次発酵による本格的なシャンパーニュ方式で造られたスパークリング・ワイン。きりっとした酸味が特徴的。
完熟のシャルドネ 2340円
G20大阪サミット、提供ワイン。芳香な香りとしっかりとしたボディ、ミネラル感、穏やかな酸味が心地よい。
※G20大阪サミットに選ばれただけのことはあります。これも美味しいです。興味のある方は是非お試しください。
飛鳥 リースリング2017 2620円
洋ナシや青リンゴを想わせる繊細な香りと生き生きとした酸味が特徴のワイン。
写真は撮り忘れのため、飲んだ直後のグラス。(^^)
飛鳥 カベルネ・ソーヴィニョン2013 3060円
オーク樽で熟成させた香ばしい樽香とまろやかで柔らかい口当たり、ノンフィルター生詰めにもこだわっている。樽で48カ月熟成。
※余裕のある方は、このカベルネと、次のアルモノワールを飲み比べていただくと、アルモノワールとカベルネの違いが分かって面白いと思います。
飛鳥 アルモノアール2017 3360円
G20大阪サミット、提供ワイン。アルモノワール種(カベルネ・ソーヴィニョンとツバイゲルトレーベを日本で交配された新品種)を100%使用したワイン。エレガントな深みとフルーティーな果実味、酸味、渋味を持つバランスの良いワイン。
にごり新酒2019 やや甘口 1320円
2017年収穫の河内産デラウェアを100%使用し、ワインの酵母を残し、濁った状態のまま瓶詰めしました。このワインに使う果汁とワインをブレンドている。
マスカット・ベリーA(「河内醸造ワイン」の元となるワイン)
今しか飲めない「河内醸造ワイン」の元となるワインで無濾過の新酒。
(河内醸造ワインの説明:適度な酸味と穏やかなタンニンを感じ、果実味豊かでフレッシュさが特徴の赤ワイン)
※完成すると上記の商品になるようです。しかし。このツアーで飲んだワインは製造過程のもののため、実際の商品の味わいとは異なるようです。貴重な1杯をいただきました。
ランチボックス
MAISONINCO※(メゾン インコ)のキッシュランチボックスとバケットが食事として提供されましたが、ワインに合う料理ばかりで、しかも1品1品が美味しかったので、完食しました。このビストロにも行ってみたくなりました。
※リンク先は食べログのMAISONINCOのページ。
・ウインナーと海老芋のキッシュ
・ハーブチキングリル
・生ハムライスコロッケ
・和風ピクルス
・ハニーマスタードのポテトサラダ
・ボロネーゼパスタ
・バケット
飛鳥ワイン・ワイナリーのまとめ
ブドウ畑の散策と工場の見学は、畑・作業工程ごとにかなり丁寧に踏み込んで、ご説明していただきました。各畑1つ1つのエピソードや、各種工程ごとに機械一つ一つについても説明を受けました。
今回の説明を一通り聞くと、ブドウ畑においては、苗木造り、接ぎ木、植樹などのブドウの樹を育ててブドウを収穫するまでを知ることができます。
そして、工場においては、各機械を確認しながら、ブドウの選果、除梗、圧搾、発酵、熟成、瓶詰めまでの一連の流れがリアルにイメージできるようになります。
テイスティングでは、個性豊かな様々な品種のワインを6種類(泡、白、赤)と、サービスで今しか飲めない1種類の合計7種類をいただきました。
各30ml程度ですが、7杯いただくと通常のグラスワインを2杯分以上は飲むことになり、結構いい気分でもあります。
ランチボックスも非常に美味しかったです。
和気あいあいとした雰囲気で、ワインの勉強ができ、何より美味しいワインと料理をいただける楽しい大人の遠足でした。
お時間が合えば、ぜい一度参加されてはいかがでしょうか。おすすめです。
なお、このワイナリーツアーの情報を、私が入手してから2、3日で直ぐに満席となりましたので、早めに申し込まないと参加できませんので、ご注意ください。
飛鳥ワイン・ワイナリー関連のおすすめ記事
・アルザス、ワイナリツアーの記事
飛鳥ワイン・ワイナリーの参考情報
・場所:大阪市羽曳野市、飛鳥ワイン株式会社。
・アクセス:近鉄・南大阪線「阿部野橋」駅から40分程度。近鉄「上ノ太子駅」から徒歩5分。
・参加料金:3000円/人。
ランチボックス代とテイスティング・ワイン6種類(各30ml)込み。
・申込方法
飛鳥ワインのHP内の「工場・ぶどう畑見学について」のページでワイナリーツアーの内容等をチェックして、メールまたは電話で申し込みします。
・併設のショップ:テイスティングした6種類のワインや、それ以外の飛鳥ワインのラインナップの多くを購入することができます。郵送もしてくれます。